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商人 #38

人生の節目に「光る一枚」を

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サトウカメラ

幸せの撮影士

佐藤 潔

STORY

37年の大ベテラン

株式会社サトウカメラは三代続くカメラ店。代表取締役の佐藤さんは、カメラの業界に携わって37年の大ベテラン。現在は全日本写真材料商組合岡山支部組合長(2024年2月13日まで10年務める)の肩書を持つナイスミドルな男性だ。

2022年に岡山ロッツから移転したことで生じた環境や心境の変化や、長年カメラ業界にいることで良かった点などをお聞きした。

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カメラの業界に興味をもったキッカケ

自らサトウカメラを継ぐという感覚ではなく、継がせてもらえるもので、社会人になったらすぐにカメラの業界に入りたいと思っていた。カメラに興味をもったのは、「生まれた時から」だった。両親から継いでほしいなどと一切言われなかったが、周囲の環境がカメラへの興味をはぐくんだ。

「三代目の倅として育ったのですが、周りからは三代目が潰すのではないかとプレッシャーを掛けられながら育ちました。しかし、カメラへの興味は人一倍ありましたね」

大学を卒業してからは、すぐに岡山でカメラの仕事を始めたのではなく富士フィルムの4特約店とも言われる株式会社カシムラに勤めながら業界の勉強をする。

その後、自身にスキルや知識がついたことを感じ、26歳で岡山に戻りサトウカメラを継ぐことになった。

やりがいは人を笑顔にすること

初対面の方を笑顔にするのは、当然難しい。笑顔を撮るということが仕事の場合は、お客様もさらに気構えてしまうだろう。そこで、お客さまの自然な表情を撮影するため、アイスブレイクの会話で笑ってもらい、かたくなっている表情を和らげてから撮影を行う。ただ、マスク生活が数年続いたため、表情筋が凝り固まってしまい、口角がなかなか上がらない方が多いという。

「僕は毎日の口角体操で表情筋を柔らかく保っています」。口角体操では、目尻と口角をくっつけるつもりでギュッと寄せる運動を左右セットで10回くりかえす。撮影の際、お客さまと一緒に口角体操をすることもある。体操をしているうちに、お互いの柔和な笑顔が見えるため、撮影の緊張も和らぐ。

「テレビ等で見る“昔の家族写真”で、子どもが険しい顔をしているのは、父親が険しい顔で『笑って!』と言っているからですよ。昔、フィルムは大変貴重なものでしたから、父親が撮影に真剣になりすぎてしまい、家族も険しい顔になってしまっているということですね。」こちらが笑顔でないとお客さんも笑顔をつくりにくいだろうという思いから、佐藤さんは今日も口角体操を続けている。

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優雅さと忙しさを感じる休日

佐藤さんの趣味はクラッシックギター。「禁じられた遊び」や「アルハンブラの思い出」等の上級者向けの曲も演奏する。また、シンフォニーホールが近いため、コンサート等を聴きに行くことが仕事終わりの楽しみである。直近ではオーケストラの演奏を聴き癒されたとのことで、中之町商店街の立地の恩恵をしっかりとうけている。

しかし、休日はゆっくりもしていられないようだ。土曜日、日曜日、火曜日が形式上の休みであるが、スタジオを空けることができるタイミングと、ここぞとばかりに出張撮影に行ったり、写真の配達に行ったりするという。先日は、市役所や学校での出張撮影のご依頼があった。「休みをしっかりとるようにしたいのですが、撮影のお呼びがかかると有難いと感じてすぐにご対応してしまいます。」と仕事熱心な一面をのぞかせた。

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中之町(表町)商店街にきたご縁

実は、現在の物件が決まる直前まで仕事をやめようと思っていた。岡山ロッツから引っ越すにも周辺地はどこも家賃が高く、理想的な引っ越し先がなかなか見つからなかった。

そんな中で、「この物件の大家さんに偶然出会い、実は、カメラの仕事を辞めようと思っていると伝えた際に、『うちの物件の2階が空いているから来たらいい。辞めるなんていつでもできるし、続けてみたらどうか?』といわれ、今のスタジオがあります。」

移動した当初は、2階なので見つかりにくいかと思っていた。しかし、電話やホームページ、チラシをみて、サトウカメラを目掛けて来てくれるお客様が多く、「ここだったんだ」という安堵の表情のお客さまを見ると、心を込めて撮影したい気持ちになる。成人式、就職活動用や受験用の証明写真だけでなく、5年、10年に一回のパスポート写真に関しても、沢山のお客さまがサトウカメラを指名し『続けてやってくれていて良かった』という声が佐藤さんの原動力になっている。

カメラ屋さんが3店舗もある町内

一言でいえばみんな仲良し。商店街の忘年会では「中之町に3軒あるうちの1軒、サトウカメラの佐藤です」と自己紹介したところ、誰もが笑ってくれ、その場が盛り上がった。

「商店街は懐の深い方ばかりなんです。」と佐藤さんは目を細める。フジカメラさんもアサノカメラさんも「サトウカメラはどこですか?」と訪ねてきてくれたお客さまを、わざわざ同行までしてサトウカメラに案内してくれ、同じ業界で長年頑張っている仲間という意識である。そしてスマートフォンの普及により写真撮影が簡単になり、写真業界の衰退を感じている。ではスタジオやカメラ屋が個人同士で競っている余裕はなく、皆が協力しながら事業を続けていかないといけない。だからこそ、町内の3店舗で協力し合えていることに心から感謝しているそうだ。事業における得意分野や店主の個性が文字通り三者三様である3店舗に、これからも手を取り合って商店街を盛り上げていってほしい。

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70年以上続く歴史の中で大切にしていること

心がけていることは、一人ひとりの写真を丁寧に仕上げることだ。特に証明写真はサトウカメラの事業の軸。写真一枚が人生に影響する場合もあるため、少しでも丁寧に撮影し、良い表情を引き出す。受験や就職などの節目に親子三代で証明写真を撮りに来るお客さまもいるというエピソードから、70年以上の歴史を持つサトウカメラの強みがうかがえる。また、オーデション用や面接用の写真を撮影した後、『合格しました!』という言葉をいただけるのがとても嬉しい。こういった報告を聞くのが何よりのやりがいだと語る佐藤さん。多くの人生の節目を力いっぱい応援してきたからこそ、サトウカメラは長年愛され続けている。

今後の展望は「仕事を続けること」

辞めるとなったらすぐに辞められるからこそ、体力が続く限りサトウカメラを続けたいと語る佐藤さん。2023年時点で現在63歳だが、直近のマイルストーンである70歳までは是が非でも頑張りたい。「展望みたいな大それたものではないですが、お客様が『サトウカメラが続けてくれていて良かった』と喜んでくれる限り、できるだけ働きたいですね。新天地にスタジオを移し、赤字も出さずに経営できているのは周囲の皆さまのおかげですから。」

引っ越し当初は、商店街に馴染めるかという不安、お客さんが来るかという心配に苛まれて、無我夢中で仕事をしていた。しかし、周囲の方々のあたたかい気質や、商店街の居心地の良さに馴染んでいくほどに、心も落ち着いていった。もしも他の場所で働いていたら売り上げ重視になってしまい、現在のようなペースで働けていなかったかもしれない。

商店街という場所だからこそ、知り合いに出会ったら挨拶をしたり、店舗同士でコラボ企画を協力したりして、「互いに支え合える人間関係が心地良い」といって佐藤さんは晴れやかに笑う。まるで、カメラそのものの様に味わい深く、年を重ねる佐藤さんの魅力が取材を通して伝わってきた。

SHOP INFO
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   岡山市北区表町1丁目10-10 2F

Tel  086-222-0022
FAX 086-222-7145

営業時間 11:00~18:00

定休日 火曜日(土・日は予約制)
 

instagram @sato.camera

http://www.satocamera.com/

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