商人 #20
藤井姉妹がつくる
優しくてアットホームが心地良い
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q. b. c hope店
ファッションキュレーターズ
藤井 好美・真由美
STORY
アナログなオンライン
商店街の中に並ぶアパレルショップ。一見さんは入ることを少し躊躇してしまうかもしれない。でも、安心して入って大丈夫。q.b.cの店長の藤井好美さんは、客が店でどう過ごしたいかを素早く見抜く。
ちょっと覗いてみただけだからそっとしておいて欲しいのか、話し掛けられてアドバイスをもらいたいのかなど。相手に合わせた接客で、一見さんも常連さんも等しく心地よく迎え入れる。
好美さんは、岡山で生まれ、服飾の専門学校卒業以来、アパレルの店員を続けている。最初は百貨店でも働いたが、学生時代にアルバイトとして働いていたq.b.cが好きで、百貨店は1年ちょうどで辞め、q.b.cに就職。その後、出産と育休の期間を除き、ずっと店長として勤めている。
q.b.cは、大阪に本社を構え、神戸や姫路など、現在6店舗を展開。本社で商品作りや卸を行っており、各店舗ではオリジナル商品と仕入れ品を、半分半分くらいの割合で取り扱っている。
仕入れは、お客さまの顔を浮かべながら
長年、アパレルに携わって来た好美さんの経歴を伺う限り、本当にファッションが好きなんだろうと思ったが、決してそういうわけでもないそうだ。
「接客している時が、一番好きですね。もちろんファッションも好きなんですけど、自分自身がオシャレすることよりは、『このお客さんには、こういう服が似合うだろう』と、持って提案に行って、それが本当にその人に似合った瞬間が一番楽しいし、時間が経つのも早いんですよね」
q.b.cでは本社から一括で店舗に送る以外にも、各店舗がセレクトし、独自に仕入れることもある。好美さんの入社動機も、仕入れの楽しさにあったそうだ。
「自分が着たいと思って入れる時もあるんですけど、お客さんが『こういうの好きそう』って思って仕入れるのが楽しいですね。仕入れた時は、お客さんに連絡したり、SNSでアップしたりします。『この人、これ好きだろうな』って顔を浮かべていた人から連絡もらったりすると、『でしょう!そうだと思ったんですよ!』って本当に嬉しくなります」
好美さんに会うために、店まで足を運んでくれるお客さんも多いという。
「会いに来てくれているなって感じることが多くて、嬉しいですね」
店から届けるDMの裏は、いつも手書き。スタッフみんなでメッセージを書いている。仕入れも、SNSも、DMも、届けたい相手を想い、その想いは確実に届き、来店に結びついている。
コロナをきっかけに再開した縁
コロナをきっかけに通販を始めた。
「しばらく疎遠になっていた昔のお客さまから、通販を始めてから連絡をいただくようになりましたね。ずっと気になってSNSは見てくれていたみたいで。もともと学生時代に岡山に住んでいたお客さまで。20代、30代と歳を重ね、結婚や転勤をきっかけに県外へ出ていかれてたけど、通販で買えるならと連絡をいただいたんです」
オンラインの通販とは言え、アナログなコミュニケーションの積み重ねがそこにある。「あなた」のために仕入れたり、商店街らしい顔の見える接客スタイルだ。
通販だけでなく、インスタグラムのライブ配信を行うようになってからは、店舗を超えた客とのやりとりが増えた。
「q.b.cは、取り扱う服のジャンルが幅広いので、シンプルにデニムとTシャツだけのスタッフもいたり、いろいろと重ね着されるスタッフもいるので、『この人が好き』っていうファンがついているんですね。『私の好きなあの人、この間インスタライブ出てたけど、その時の服ある?』などと、店舗に来たリピーターさんから質問があったりします。逆に、私から『そのスタッフが推しているブランドですよ』ってお勧めしたり」
好美さんの店舗のインスタライブには、実は、好美さんの妹、真由美さんが出演されている。
「配信をずっと見ていると親近感を持っていただけるんですかね。服には全然関係ない、『髪切った?』って言うコメントが入ったりもするし、『これ姉妹でやってるんですよ』って言うと『え?姉妹なの?』って驚かれたりとか(笑)他店舗のリピーターさんとのやりとりも結構ありますよ」
真由美さんは、好美さんの育休のタイミングで手伝ったのをきっかけに、結局そのままずっと第一線で働き、好美さんの良きパートナーとして、姉妹で共に切り盛りしている。
「妹は、お客さまの顔と名前を覚えるのが、すごく得意なんですよね。私も顔を覚えるのは得意なんですけど、妹もいて心強いですね」
友達に会うように、好美さんと真由美さんのいるq.b.cに足を運び、どんな服を勧められるか、楽しみに訪れてみたい。
SHOP INFO
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もめ
writer
PLUS
内田 伸一郎
Photographer
約10年に渡り岡山の山村エリアで暮らし、宿の女将を経験。自分の人生と感覚を観察して、文章を書くことが好き。現在は京都を拠点にクリエイティブディレクションや、コミュニティの運営、ライティングなどを行う。