商人 #27

一人ひとりの女性や家族と向き合うクリニック

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一般社団法人 予防医療・漢方医療会

女性と家族のクリニック

パーフェクトシティドクター

奥田博之・中村祐子

STORY

「誰かに自分の身体をしっかり診てもらえている」

2020年、中之町商店街に「女性と家族のクリニック」が新しく開院した。喫茶店「自家焙煎珈琲 OTOYA」と時計店「松井時計」に挟まれた場所にあり、暮らしに寄り添うクリニックであることが窺える。

このクリニックは、病気には至っていないものの健康ではない状態である「未病」の改善に重きを置き、性別や年代を越えて総合的に診ることを大切にしている。また、西洋医学と東洋医学の両面から診療していることも特徴だ。岡山で55年にわたり婦人科医として働いている奥田博之先生と、一緒にクリニックを営む娘の中村祐子先生にお話を伺った。

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患者の一生涯に寄り添いたい

大阪出身の奥田先生は産婦人科の開業医だった両親を持ち、幼い頃から患者と向き合う両親の姿を見てきた。高校卒業を控え、将来のことを考えた時に、医者を目指そうと岡山大学医学部へ進学。専門とする科を決める際は悩んだというが、親孝行をしなければと思い、父と同じ婦人科に決めたという。

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奥田先生は婦人科医として岡山大学病院で患者を診療していくなかで、ある課題に直面した。それは「臓器別で分かれている大学病院の外来では、婦人科の範囲を超えると診られず、患者の一生涯に寄り添うことができない」ということだった。

女性の繊細な身体を総合的に診ることができる良い方法がないのだろうか、と考えていた頃、1990年前後にアメリカで発祥した「男女の身体的な違いを考慮せず一括りに診察や治療をするのではなく、性差に考慮した医療が必要」という考え方が2000年頃に日本にも持ち込まれた。しかし、そのように女性の身体を幅広く診療できる外来は日本国内に2ヶ所のみだったという。

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そこで、2003年に中四国初となる「女性を診る総合外来」をつくったところ、口コミで広まり、診療に訪れる患者が殺到したという。現在、日本における女性外来の数は約300まで広がっているが、その全国の事例を引っ張る存在として、駆け抜けてきた奥田先生は「今度は岡山に貢献したい」という気持ちから地域密着型のクリニックを岡山県内ではじめ、数回移転したのち現在の中之町商店街に落ち着いたのだという。

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女性の身体に丁寧に向き合おうと考えた理由は、奥田先生の専門が婦人科ということに加え、女性特有の身体のつくりが関係している。若さと元気の源である女性ホルモンは、閉経後に少しずつ減少すると言われており、骨粗鬆症やアルツハイマーなどの原因につながるのだそうだ。しかし人生100年時代、出産や子育て、仕事を頑張る女性たちの生活の質を上げて、笑顔で過ごしてほしいと考えている。

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その考えは女性だけにとどまらない。「女性」と「家族」というクリニックの名前にあるように女性はもちろん、男性、子ども、お年寄りまで、年齢や性別・疾患に関係なく診察をしている。また、手術が必要になった場合は、大学病院への紹介や手術まで、迅速に対応することも可能だ。

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一人ひとりと真摯に向き合う町医者として

患者にとって「誰かに自分の身体をしっかり診てもらえている」という意識や安心感が大切だと話す奥田先生。

「機械で撮った写真で病気を判断して、薬をもらう。同じ薬を飲むにしても、あなたに良いですよと処方してもらうのと、ただ飲んでおきなさいと処方されるのでは気分が違うはずです。患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。」
 

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だからこそ、病気になる前の状態に働きかける「未病」の考え方を取り入れている。病気に対して治療をする「西洋医学」と、身体の状態に合わせて漢方を処方する「東洋医学」を組み合わせた診療で、その人の性格や経験に合った過ごしかたを提案している。

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商店街の歴史あるお店のように、医療のバトンを次世代につなぐ

娘の中村先生とは、一緒に働き始めて10年近くになるという。

 

「小さい頃、入院をしたときにお世話になった看護師さんがとても優しくて、看護師さんになりたいと思ったんです。そのことを父に伝えたところ、お医者さんも良い仕事だよと言われて、女性であることを生かせる婦人科に興味を持ちました。子育てが落ち着いたタイミングで学び直して、現在に至ります。」

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婦人科に加え、女性のがん罹患数トップの乳腺科も専門とする中村先生。奥田先生は「このクリニックをやれると思ったのは、娘が私の考え方を受け継いでくれるから。最近ではインターネットで情報を見つけて来院してくださる方も増えている。若い世代にも未病の考え方が身近になるように、素地をつくっていってほしい」と話す。

 

中之町商店街にある老舗のお店が代々受け継がれてきたように、親子2人3脚で歩んできた「女性と家族のクリニック」は、一緒に働くスタッフたちに支えられながら、地域に根ざしたクリニックになっていくだろう。

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医療機関は病気や怪我など、身体に不調があるときに緊張しながら行く場所だが、ふたりは診療後に「安心した」と笑顔になれる敷居の低いクリニックを目指している。

 

表町で商店街に面しているクリニックは珍しく、中之町にある当クリニックと、上之町で奥田先生の教え子の方が開院している「みやびウロギネクリニック」の2ヶ所のみ。

 

物件を探していた当初、不動産屋さんにも「本当にこの場所でいいんですか?」と不思議がられたそうだが、買い物や喫茶店に行く感覚で立ち寄れる場所にしたいと考え、あえて商店街を選んだ。地域住民の生活の場である商店街で、生活の暮らしに寄り添うクリニックを目指して、親子2代のチャレンジはこれからも続いていく。

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CLINIC INFO
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  岡山県岡山市北区表町1-9-65

 

【Tel】086-230-1007

【診療時間】9:00〜12:00/13:30〜17:00

【休診日】土曜日・日曜日・祝日

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ココホレジャパン株式会社

中鶴 果林

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nanairo

Photographer

埼玉県出身、瀬戸内海に浮かぶ広島県の島に移住。岡山市奉還町にあるココホレジャパンにて、事業承継の機会が得づらい地場産業の後継者課題を解決する「ニホン継業バンク」の担当として、仕事に対する思いや魅力を取材し、求人記事伝えるライターを手がける。

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