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商人 #29

環境を考えるオーダーニット

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​オー・トリコ

Haut tricot

Social fashion adventurer

高田 健太

STORY

ミニマルでクールなニット店

商店街の中で異色を放っている、現代的でスタイリッシュな店がある。名前は「Haut tricot - オートリコ」。2022年4月にオープンした、オーダーニットの製造販売店だ。ミニマルな空間に、鮮やかな色のニットが並ぶ。

サイズのお直しができないニットは、既製品をぴったりのサイズで着るのは難しい。Haut tricotでは、サイズを5段階から選んだ上で、着丈と袖丈を1cm単位で調整できる。そのため、「横幅はダボッと、でもウエストは短めにしたい」など、個人の体型と好みに合わせたニットができあがる。

色の豊富さも特徴的だ。2022年9月現在、たとえば最高級コットンニットのカラーバリエーションは、31色。リブカラーのオプションをつける場合、選べる色の組み合わせは31色✕31色の961とおりにもなる。
 

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向上心のかたまり

Haut tricot代表の高田健太さんは、知的探究心と向上心が高い。色彩検定1級の資格を持ち、趣味の読書では1年に300冊以上の本を読んでいるそうだ。読書ジャンルも、哲学・歴史・経済学・文化人類学・ビジネス等、多岐にわたる。

 

大学時代は東京でマーケティングと経営を学び、卒業後アパレル業界へ。販売員として働くかたわら勉強を重ね、社内ベンチャーにチャレンジし、Haut tricotを立ち上げた。

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アパレル業界の大量生産・大量消費を変えたい

現在のアパレル業界は、大量に作り、売れ残りをセール・廃棄するのが当たり前になっている。

 

1枚の衣類を生産するため、多くの資源とエネルギーが使われている。しかし日本に供給される衣料の半数が過剰在庫となり、新品のまま廃棄されているのが現状だ。

 

高田さんは、「テクノロジーによるオーダーニットで、ニューラグジュアリーを創造する」をビジョンに掲げ、大量生産・大量消費・大量廃棄のアパレル業界に、一石を投じている。

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機械が編み上げる、縫い目のないニット

通常のニットウェアは、パーツを別々に作り、縫い合わせて完成する。しかし、Haut tricotのニットを作るのは、無縫製でニット1着を編み上げる、まるで3Dプリンターのような機械だ。

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できあがったニットは縫い目がないため、着心地がよい。裁断や縫製が不要なことから、製造にかかる時間もコストも削減できる。端切れが出ないので、廃棄物も減らせる。

 

「奇跡の綿花」シリーズは、世界最高級と言われるアメリカンシーアイランドコットンを100%使用しており、光沢となめらかさが特徴だ。触った人からはシルクと思われることもあるのだとか。

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Haut tricotは、やらないことを削ぎ落とした、尖ったブランドに思える。そして高田さんの、志と日々学び思考するストイックさを知ると、厳しい人なのではないかと、少し身構えるかもしれない。しかし物腰がとても柔らかい人だった。

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新しい洋服の作り方を

―ご両親もファッションの仕事をされていると聞きました。高田さんは幼いころからファッションに携わりたいと思っていましたか?

ファッションが身近だったので興味はありました。ただそれ以上に、会社経営に携わりたいと強く思っていましたね。経営者である親の姿を見てきたので。

―オーダーニットのお店にしたのはなぜですか?

オンラインストアが広まっている中で、これからの店舗は今までと違う付加価値を作らなければ生き残っていけないと考えたからです。

このニットを織る機械に出会って、これがあればサプライチェーンを短くでき、新しい洋服の作り方ができるんじゃないかと思ったことが、大きなきっかけですね。

Tシャツやシャツを製造するには、人の手をかけて縫う必要があります。その上で価格を抑えようと思ったら、海外に出すしかない。海外に出すと時間がかかる。そうするといっぱい作ったほうが安くなる。結局大量生産になってしまうんです。

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―色はどのような基準で選定していますか?

あまり他でやっていない色を選んでいます。わずかな色の差で着やすさが変わるので、色の勉強はかなりして、着やすさを意識して選びました。売れる色とはいえないものもありますが、バランスよく揃えています。

―オープンして数ヶ月、今のところ手応えは?

思ったよりも良いですね。立地が大きいのかなと思います。人が集まりますし、上質なものを求めるお客様が多い場所だと感じています。

―ひとりでブランドを任されて、どうですか?

大変です。作ること・段取り・PR・ブランディング……全部やらないといけないので。いい経験をさせてもらっています。すべてが初めてなので、できていないことばかりですけど。「この品質の服をこの価格で販売できるのは、自分でやってるからこそだよね」と言ってもらえることがあり、嬉しいですね。

考えるきっかけとなるブランドに

―今後の商品展開はどのように考えていますか?

素材を増やすことと、形を増やすこと。まずウールは増やす予定です。

―素材と形のこだわりは?

大前提として天然素材で、安っぽくなく、家庭で手洗い可能な素材で考えています。ベーシックでトレンドレスなものを作ることは変えません。毎年扱える素材・形を増やして、蓄積していくイメージですね。Haut tricotでは在庫を糸でストックするので、作った服をセールで売りきる必要がありません。

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―今後どのようなブランドにしていきたいですか?

洋服を大切にしたり環境を考えたりするきっかけになるブランドにしたいと思っています。

一般的に洋服を作って売るには、工程ごとに多くの会社が携わっています。素敵な面でもありつつ、環境汚染対策や生産合理化が進まない原因のひとつでもあって。アパレル業界に新しい風を吹き込めたらと願っています。

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使う人にも社会にも嬉しいニット

「まだ全然知らないんですけど」と謙遜しながらも、作る側を知っているからお客様に伝えられることがあると、高田さんは言う。視野が広く、明確なビジョンを持ち、知ることを楽しみながら考え続ける姿は、眩しく見える。

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東京に住んでいた経験、販売員としての経験、ブランドづくりの経験。それらをすべて糧にし、常に広い世界の情報をインプットして、使う人にとっても社会にとっても良い商品を生み出し届けていくのだろう。

 

袖を通すたびに「良い買い物をしたな」と嬉しくなり、日常に寄り添ってくれる、そんなニットだ。

SHOP INFO
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  岡山県岡山市北区表町1-9-67

【Tel】086-206-5440


【営業時間】
  月・水・金 12:00~17:00
  土・日・祝 11:00~17:00


【定休日】火・木曜日

https://hauttricot.com

writer & Photographer

吉野 なこ

Naco Yoshino

フォトグラファー/デザイナー/ライター。
素敵な人やサービスやを応援したくて、撮ったり書いたりしている。倉敷市在住、ときどき旅人。美しいものを見るのが好き。

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