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商人 #36

お客様は神様である!

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しゃれたきもの備万

接客と販売の匠

石井 静香

STORY

この大切な和文化を、これからの若い世代に繋いでいく。

県庁通りから中之町商店街に入ってすぐに目に入る「備万」の暖簾。 その暖簾をくぐると、凛とした佇まいで出迎えてくれた石井さん。 その雰囲気から漂う空気感と「いらっしゃいませ」とニコッと笑った優しい笑顔のギャップにぎゅっと心奪われた。石井さんは着物業界に50年携わっている。 時代もどんどんと変化する中で、当たり前だった「和」文化がいつの間にか、少し手の届かない存在になってきたように感じる近年。時代の変化にかかわらず石井さんの「お客様は神様!」という精神は変わらない。素敵だ。そんな石井さんの魅力に惹き込まれていった

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銀行員から着物業界へ

学校を卒業後、岡山にある銀行へ入社し銀行員としてお勤めし、出産に伴い10年間勤めた銀行を退職することになった。 お腹が大きくなってきた時に、岡山駅の地下にあった着物店「三松」に入社した昭和49年頃。そこから石井さんの着物業界の人生が始まった。 入社当時はバブルと相まって、お客様も店舗前のワゴン商品を抱えるようにして買っていた時代だという。着物文化が当たり前であったこともあり、結婚が決まると着物が普通に買われていった時代。そんな着物業界にどんどん魅了されていった石井さん。

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“やらなきゃ” ではなく「ありのまま」

銀行員で10年、三松で30年、備万で20年。勤務年数を伺っているなかで「86歳になっていてもお勤めさせてもらっている・・」とさらりとご自身の年齢を言われた。 「えっ!86歳!?!?!」と思わず聞き返してしまうほど驚いた。 なんと若々しいのだろう。この美しさの秘密になんとか迫ってみたくうずうずとしてきた。 石井さんに「年齢は秘密ですか?」と聞いたところ「いえ特に。お客様は皆様知っておりますから」と。 そんなところも石井さんの若々しさの一つなのだと感じる。更に我慢できず「何故そんなに美しいのか教えてください!」と思わず突っ込んでしまった。そんな私の質問に石井さんは笑顔でこう答えてくれた。

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「昔バレーボールの選手だったから、自分を飾ることもお化粧もすることもなかった。今でも牛乳石鹸でざっと顔を洗うくらいで、お化粧は嫌いなんです」とニコニコと話す。「”やらなきゃ”ではなく”ありのまま”」を大切にしているのだと。 特に外見は何も気にしないそうで「私、男性的なんですよ!」そう語る石井さんは、内側から出てくる「在り方」が外見に現れているのだと。

改めて “人の美しさとは?” を学んだようであった。

心と心の繋がりが非常に大切

「人と人は、心と心の繋がりが非常に大切だと思いますね。これは本当に一番です。 店頭に立っていると、昔馴染のお客様が「ここに居たの!!」と私を見つけて声をかけてくださいます。お茶を飲みながら、久しぶりの思い出話をされ、次回はひ孫さんを連れて来られるなど。本当にお客様が私を大事にしてくださる。こちらがしなきゃいけないことを、逆にお客様の方がしてくださいます。 だからこの歳になってもありがたいなと、いつも感謝、感謝。感謝の気持ちでいっぱいです」

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今日も誰と会えるだろう
「ラポール販売」

朝起きて、さっと顔洗って準備する。そして“今日も誰と会えるだろう” と思い、ワクワクと楽しんで毎日お店にきているのだとか。心の繋がりというものは、いつも忘れることはできない。

お客様と自分との信頼関係のことをフランス語で【ラポール】という。そして【ラポール販売】という販売手法があり、それは正にその人その人の心の繋がりによるもの。

「基本の言葉っていうのはね、やっぱり信じなきゃいけないなと思っておりまして。偉そうに年のいったばあさんが、フランス語なんてそんなこと言ったら笑われるかもしれませんけど、これは基本なんですよ。 何事も基本を大切にしてね、そうやってお付き合いすることによって、お客様が心を開いてくださいます。私はもうそれだけが取り柄で他は何にもないんです。100万円のお買い物をして頂いたから、この人だけ大切にというのでなく10円の人も100万円の人も同じなんですよ。その気持ちこそが心の繋がりなんです」

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人と人との繋がりを心の底から大切にしている石井さん。その心が言葉にも、そのお顔にも全てに表れている。石井さんにいろいろ見立ててもらいたいとお客様が感じるのも納得できる。

「私はもうおばあちゃんなんですが、だからこそ着物は自信持ってご案内できます!そうお客様にお伝えします。偉そうに言ってしまいますが、お客様からも「そうなんじゃろう!」とご納得頂けるのでありがたいなと思いますよ。だから私は飾ったことを言うのではなく、もうありのままをお話できたら一番いいなと思っています」

 

取り繕った言葉ではなく、心からの言葉で対応されている石井さんだからこそ、お客様は信頼し、そして頼って来られる。この安心感が私達には必要だと感じた。

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全身から伝わる感謝

― 石井さんが思う良いお店とは?

 

「昔と違って教育がだんだん薄れてきているのを感じますね。 これをやらなきゃいけない!ではなく、ちょっとした笑顔、ちょっとした挨拶を忘れたらいけないです。 商品を購入されたお客様に、ただありがとうと言うのではなく、 気持ちを込め店頭までお見送りするなど。そういった姿勢ですよね。

 ”まだ見てくれているのかな?” と、振り返って後ろを見る方もいますから。

何度も言いますが、心と心の繋がりが一番大切ですね。 本当にお客様は神様だと思います。」

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― お仕事がお休みの日は何を?

 

「毎週火曜日がお休みなのですが、それがまた忙しいんですよ!」と楽しそうに話す石井さん。

「今日はスイカ買いに行くから一緒に行きますか?」「今日は小鳥の撮影会が後楽園であるよ!」とお誘い頂いたりと、そういった着物から全く離れたところで、お客様とのお付き合いをしている。 「お客様としてお店に来てくださる方と、お休みの日にはお友達のような感じで一緒にお出かけをします。お客様と色んな場所へお出かけし、コミュニケーションをとります。だから家でじっとしていることってほとんどないです。そんな私の行動を見て皆から“ちゃんと寝てるんですか?!”と心配されるけど、私あんまり寝ない人なんですよ。睡眠時間は5時間程で十分。12時前には寝て、朝5時には必ず起きます。ワクワクしながら目が覚めて、今日は誰に電話して、どんな約束しようかなとか、 いいことがあったらすぐお客様へ電話して、今度こんな商品が入るから見に来てねって」

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― 幸せを感じる時ってどんな時ですか?

 

「お客様とコミュニケーションをとることが私の一番の幸せですね。」

「50年のお付き合いの方もおられ、今でも多くの方がお店に来てくださっています。 感謝以外にはないですね。上辺だけじゃなく本当にありがたい。人と話すことが下手ながらも、続けてこれたことは、とてもありがたいと思います。それもただ話すのではなく、教えていただけているという気持ちがありますからね。会話の中で色々自分が知らないことも聞けたりします。 本当に、私はもうお客様から可愛がられて、更に色々なことを教えていただけるということがもう全て勉強になります。だからもう本当に感謝感謝です」

何度【感謝】の言葉が出てきただろう。その言葉が物語るように、お客様を心から大切にしていることが全身から伝わってきた。

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石井さんの夢は

「元気で長生きすることと、人に迷惑をかけないこと」

「着物は“大変”というイメージがあり、まず着付けられないというのが一番のネックです。あと値段も高くルールも多くある。そんななか「備万」では【趣味と着物】というテーマで、自由に普段着として着物を着て欲しいと考えています。どこにでもあるようなものではなく、ちゃんとした形で仕立ての良い商品をお客様へお出ししたい。それが私たちの想いです。

先祖代々紡いできた日本の和文化のお着物。この大切な和文化を無くすことなく、これからの若い世代に繋いでいくことが今の私たちにできる大切な使命なのではないかと感じています。

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SHOP INFO
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   岡山市北区表町1-10-24

Tel  086-236-1808

営業時間 10:00~19:00 

​定休日 火曜日

https://j-style0618.com/

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